水面下
手をさしのべない優しさを持つ彼は思慮深く、大人で、ひどく残酷だ。
週二回ほど朝八時過ぎに家を出る甘やかされた大学生活さえまともに送れない、社会に適合できないわたしの書く文章と価値観を好きだと言ってくれるひとびとの存在にどこまでも救われている。
文章を本気で書きはじめて、生きやすくなった。
文章を書くことは自分の弱さや頭の悪さに対面することでもあり、ときに大きな苦痛を伴うが、それでもわたしは書きたい。それはわたしの文章を愛してくれるひとびとに応えるためで、わたし自身を愛するためでもある。
どれだけ生きるのがつらくても第三者は手を差しのべられない瞬間がある。いまわたしが面しているのはそういう局面で、必死にもがいて水面を目指すしかない。「僕は踏み込めないけど、幸せになってほしい」という彼の言葉がいまはただひたすらに苦しい。