平静とロマン

平成生まれの大正浪漫

ここで呼吸をしていること

母が旅行券を当てたから1泊2日で旅行に来ている。
知らない場所に知らない道を通って行って、知らない部屋で一晩眠る。見たことないものやことだらけで、ああ、この道路はいま通ってるきりで、もう一生通ることはないかもしれない、これからいくあの場所だって、さっき行ったあれの場所だってそうだ。もう一生来ることはないかもしれない。そう思いながら過ごす時間が長い。旅行は、物事の一回性を強く強く感じる時間だ。
わたしはそういう寂しさの上にある、一回限りの鮮やかな体験が好き。もう一度来られると思ってなかった場所を再訪したときの思いがけない親しみは何よりもあたたかくてもっともっと好き。

今日は、高校の行事で3泊ほど宿泊したホテルでお昼を食べた。数年前に泊まったそのホテルは訪れた街のなかではかなり大きなところで、とにかく食事がおいしかったことを覚えていたから、観光ガイドで見つけたときすぐにいきたいと言った。実際、久しぶりに食べた料理はすごくおいしかった。

夜は、たまたま見つけたすごくおしゃれな創作フレンチのお店に入った。小さなお店でお客さんがたくさんいたから料理が出てくるのにすこし時間がかかったけれど、料理やデザートはもちろん、食後の紅茶も気の利いたブランドですごくおいしかった。ノンアルコールのカクテルが料理に合わせて出てくるドリンクのコースが素敵だった。

ホテルに戻ってから調べたところ、なんと夜に訪れたそのレストランは、昼ごはんを食べたホテルで総料理長をしていた料理人が昨年独立して開いたお店だった。
わたしが高校の行事で訪れたのは3年ほど前だから、おそらくその料理人が総料理長をしていた頃だ。おしゃれな店構えに惹かれて入っただけだったから驚きだった。そりゃあおいしいはずだ。高校生の旅行で出される料理すらおいしかったんですもの。
こういうことがあるから旅行は好き。 一回限りの出来事だと思っている素敵ななにかに、もう一度出会えることがあるから。神さまってもしかしたらいるのかもしれないなってちょっと思う。